松田 裕貴 さん(2022年5月号掲載)
- [更新日:2022年5月9日]
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松田 裕貴(まつだゆき)
奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科助教、博士(工学)。ITを活用した地域の課題解決・活性化に取り組むCODE for IKOMAのメンバー。29歳。
未来を見据え、人の感覚とAIを結びつける研究者
AI(人工知能)を人間の感覚に近づける。現在進めている研究のテーマだ。あらゆることがデジタル化し、人を介さなくても、渋滞予測や天気予報など、さまざまな情報が手に入るようになった。しかし、「人混みの雑音」と「滝から落ちる水音」は、たとえ同じ音量でも感じ方が異なるように、デジタル機器が計測する物理的情報と体感の間には「ずれ」が発生することがある。
「個人の考え方や感じ方などを理解したAIが混雑度や気温などの物理的情報を処理すれば、個人の感覚に近い情報を柔軟に提供できるようになるはず。その情報を生かせば、日常をより心地良く、快適にすることができると思うんです」
元々、研究職を目指していたわけではない。研究の「イロハ」を学び、原点となっている明石工業高等専門学校を進学先に選んだきっかけは、父親が高等専門学校の出身だったから。当時はスマートフォンやノートパソコンが普及し始めた頃で「デジタル機器で何ができるんだろう」ぐらいの気持ちで、情報系の専門的な知識を学び始めた。
「小学生のとき、工作や壁新聞は納得できるまで作りこむタイプでした。膨大なデータを収集したり、解析したり、緻密な作業を繰り返す研究は、体力も精神力も必要。凝り性の自分に合っているんだと思います。奈良先端大の学生だったときも、入浴以外は寮に帰らず、研究室に籠もる日が続いたときもありましたね」
研究には、人の興味や感覚などのデータが欠かせない。多くの人の協力を得るため、地域共創にも力を入れている。3月には生駒南第二小学校の子どもたちと1年間かけて開発したアプリ「にしょロボくん」を完成させた。子どもたちが校区を歩き、集めた地元情報をクイズ形式で紹介するしくみで、地域の魅力を蓄積し共有できる。
「私にとっては情報を集められる機会になり、子どもたちにとってはアプリを完成させたという達成感を得つつ、タブレットの使い方を習得できる機会にもなったと思います。私たち研究者の得意と地域の強みを生かし合う取組を続けて、より良い未来をつくっていきたいです」
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