平成21年生駒市教育委員会第1回定例会提出 第3次報告
- [更新日:2015年9月2日]
ソーシャルサイトへのリンクは別ウィンドウで開きます
さらなる教育施策の充実を
平成21年1月
子どもたちの確かな学力育成のための検討委員会
はじめに
国では、改正された教育基本法の理念を具現化するため、10年先を見据えた教育振興基本計画を策定し、平成20年7月に閣議決定されました。本計画は改めて「教育立国」を宣言し、我が国の未来を切り拓く教育の振興に対して社会全体で取り組んでいくため、今後10年間を通じて目指すべき教育の姿や、今後5年間で実現を目指す主な目標を定めるとともに、取り組むべき主な施策等を示しています。
また、同年3月告示の新学習指導要領は、「生きる力」の育成理念を引き継ぐとともに、「学力低下」の指摘に応え学力の3要素である(1)基礎的基本的な知識・技能の習得、(2)知識・技能を活用して問題を解決するための思考力・判断力・表現力の育成、(3)学習意欲の向上を図るための言語活動や理数教育の充実、豊かな心とたくましい体を育むための道徳教育や体育の充実が盛り込まれており、地方公共団体・学校現場のたゆまぬ教育改革が求められています。
本検討委員会においては、平成18年7月の設置以来、これからの社会を生き抜く「生きる力」を身につけさせるために、「豊かな人間性」や「健康・体力」とともに必要な要素である「確かな学力」をどのように育成すればよいのか、テーマを設定し検討を重ねて参りました。
今般、所掌事務である「その他学力育成に関すること」について、最近の教育情勢や本市の状況を踏まえて調査検討を重ねた結果、学力を狭義に捉えるのではなく、意欲・関心など学力を支える力を含め検討する必要があることが議論されました。具体的には、本市独自施策として取り組んできた情報教育特区の今後の在り方や小学校に新たに導入される外国語活動(英語)、読書活動の推進等について、一定の方向性が見いだされたことから、ここに「第3次報告」としてまとめ報告します。
平成21年1月23日
生駒市教育委員会
教育長 早川 英雄 殿
子どもたちの確かな学力育成のための検討委員会
委員長 大原 裕
1 目的
今般の国における教育改革の動向と本市の教育ニーズを踏まえつつ、これからの社会を担う子どもたちが主体的、創造的に生きていくため、21世紀に必要とされる基礎基本を的確に捉え、「確かな学力」の育成をめざしてさらなる教育施策を検討する。
2 委員会の調査研究事項
(1)小学校1年生30人学級編制の今後の方向性について
(2)その他学力育成に関し必要な事項
3 委員会の構成
(順不同、敬称略)
委員長 大原 裕 生駒市校園長会会長
副委員長 大島 眞規 生駒市PTA協議会
委員 西村 徹 生駒市教職員組合
委員 井上 宝 生駒市公立学校教職員組合
委員 佐々木 栄 生駒市小学校・中学校教頭会会長
委員 辻野 トシ子 生駒市幼稚園園長会
委員 朽木 丈二 生駒市中学校校長会
委員 山本 公一 生駒市小学校校長会
委員 久保 とき代 公募
委員 藤村 義邦 公募
4 委員会の開催状況
第1回
- 日時
平成20年10月27日(月曜日) 15時00分~16時30分 - 場所
市役所401・402会議室 - 主な案件
・委員会の概要説明
・実施施策の報告について(預かり保育、3歳児全員受入れ、小学校1年生30人学級)
・全国学力学習状況調査について
第2回
- 日時
平成20年11月17日(月曜日) 15時00分~16時30分 - 場所
市役所401・402会議室 - 主な案件
・30人学級の今後の方向性について
・情報科について
・小学校の英語活動について
第3回
- 日時
平成20年12月8日(月曜日) 15時00分~17時00分 - 場所
コミュニティセンター206会議室 - 主な案件
・小学校の英語活動について
・読書活動の推進及び学校図書館の活用について
第4回
- 日時
平成21年1月19日(月曜日) 15時00分~17時00分 - 場所
市役所401・402会議室 - 主な案件
・第3次報告(案)について
・その他学力育成に関し必要な事項について
5 委員会の会議、会議録の公開
(1)会議の公開方法 制限公開又は完全公開
(2)会議録の公開方法 次回開催の会議にて承認後、市ホームページ等を通じて公開
6 調査研究事項
(1)30人学級編制の今後の方向性について
現状と課題
第2次報告の「小学校低学年での少人数学級の実施が望ましい」との提言を受け、幼稚園から小学校へ、教育環境の変化が激しい1年生を対象に、平成20年度から30人学級編制を導入した。実施にあたっては、平成19年度に市費講師の採用試験を行い、現在、教室不足の3校(生駒、生駒台、壱分の各小学校)を除く9校で取り組んでいるが、3校については講師加配により少人数指導を行うとともに、平成20年度中に増築工事等を行い、平成21年度からは全校で小学校1年生を対象に30人学級編制を行う予定である。
今後の課題としては、30人学級実施による効果を検証するとともに、2学年へ4の学年進行、中学校への導入等、今後の方向性について検討を行う必要がある。
主な意見
- 教員を対象としたアンケート結果から、30人学級の実施により、教師がゆとりを持って子どもに接することができ、きめ細かな対応ができていることがうかがわれる。
- 30人学級の実施により、教師が子どもに接する時間が増加したものの、教材研究や工夫した授業を行う十分な時間ができたとは言えない。
- 国の基準では40人学級となっているため、30人学級の1年生と40人学級の2年生では、1クラスの人数に大きな差が生じる場合がある。学校生活において、小学校2年生の初めの頃は1年生と大差がないので、学年進行等、30人学級編制の積極的な推進を期待する。
- 検証には学校側だけでなく、保護者や子どもの様子も把握する必要があると思う。
(2)その他学力育成に関し必要な事項
1 教科「情報」のこれからについて
現状と課題
平成16年3月に構造改革特別区域の認定を受け、同年4月から生駒台小学校を皮切りに、市独自の教育課程のもと小学校で教科「情報」の授業を行っており、年次的に適用校を増やし、平成20年度には全小学校で実施している。専任の市費講師の配置、パソコンの入替え、校内LANの整備等、環境整備にも力を入れてきたが、平成20年7月から特例措置は全国化(一般化)されたとともに、小学校では、平成23年度から新学習指導要領が実施される。
新学習指導要領のもとでは、総合的な学習の時間が削減されるため、現行どおり総合的な学習の時間を充てて教科「情報」の授業を行うことは困難と考えられるが、これまで力を入れてきた情報活用能力及び情報社会に参画する望ましい態度の育成については継続すべきと考えられ、今後どのように取り組んでいくかが課題となる。なお、早期導入校では開始から数年が経ち、教師、児童ともパソコンの操作に慣れ、情報活用能力の育成が進捗するなど、一定の成果を得たと考えている。
主な意見
- 情報機器の改良、専任市費講師の配置及び職員研修の実施等により、教師は情報機器の扱いに慣れてきたと思うし、子どもたちも力をつけてきていると感じる。
- 5・6年生は必要な情報を取捨選択し自分の考えをまとめる力も必要なので、情報活用能力の育成は今後も重要である。
- 調べ学習ではインターネットに頼りすぎており、図書を使った学習が少なくなっている。情報機器の利用と図書館活用の兼ね合いが課題となる。
- 情報機器の活用に優れていれば良いというものではなく、手で書く、手で作るなど、それぞれの発達段階に応じた表現や発信の方法を見直し、調べ学習について、教師も手法を工夫すべきである。
2 小学校の外国語(英語)活動について
現状と課題
学習指導要領の改訂により、平成23年度から小学校5・6年生での外国語(英語)活動が必修となる。現在でも、小学校からの要請に基づき中学校担当のALTを派遣するなど、学校によっては英語の時間を取り入れているところがあるが、小学校の英語活動について、平成23年度までに全市的に体制を整えることが課題となる。
また、児童が英語活動に興味を持ち無理なく取り組めるよう、早期導入等、生駒市独自の施策についても検討したいと考える。
主な意見
- 現場では、学校の受け皿作りが課題となるが、日常業務をこなしつつ体制を整えていかねばならない。
- 現在でも小学校で英語に接する機会はあるが、時間数、学年等、学校により取り組み状況が異なっており差がある。新学習指導要領の実施までに、全市的に足並みをそろえた形で体制を整えることが必要である。
- 児童がなるべく早く英語の発音に慣れるように、英語に親しむ機会は多い方がいいと思う。
- 中学校では、授業以外でも生徒が自ら進んでALTに話しかけることがある。ネイティブの英語に触れることは大切だと思う。
- ALTとうまくバランスを取りながら取り組んでいきたいと思うが、中学校とは別に人材を確保することが求められる。
- 生駒市は学研都市という特性があり地域人材も豊富なので、地域住民とうまく連携できればいいと思う。
- 英語に触れることは、語学学習というだけでなく他国の文化に触れることにもなる。小学校では楽しみながら触れる程度に考え、英語嫌いにならないよう生活に密着させた取り組みが好ましい。
- 5・6年生よりも早くから英語を取り入れるとなると、総合的な学習の時間を使うことになり、英語学習だけでなく総合的な学習の時間全体として、どのように取り組むかが大きな課題となる。
- 学習指導要領に規定されない学年についても、外国語=英語と決めてしまってもいいものだろうか。他文化に触れる機会も大切であり、他の言語も含めて考えるべきだと思う。
- 多文化、多言語に触れる機会は、現在でも総合的な学習の時間で取り入れており、今後も行っていくものと考えている。
- 保護者の中には早くから英会話教室に通わせる熱心な家庭もあるが、英語の授業が始まると次第に塾通いに変わっていく。英会話と学校の英語は異なるものだと感じている。
- 地域により温度差があるが、市が英語学習に早期から取り組むことを期待する保護者もいると考える。
3 読書活動の推進及び学校図書館の活用について
現状と課題
本市においては、「生駒市子ども読書活動推進計画」が策定されている。
各学校では、昼休みや放課後に図書館を利用できるよう努めるとともに、読書の時間をつくるなど、工夫して読書活動に取り組んでいるが、学校図書館の整備及び活用は十分とはいえず、一般的に小学校高学年や中学生からの図書離れが懸念されている。
また、児童・生徒は情報機器に慣れているためインターネットに頼りがちで、本を利用した調べ学習が不得手である。
なお、小学校では法令に基づき司書教諭を配置済みだが、校務の軽減はなく本来の役割を果たせていない。
また、調べ学習等では本の種類や冊数の関係で、学校図書館よりも公立図書館を利用することが多い。
主な意見
- 幼稚園では保育に絵本の読み聞かせを取り入れており、生活経験の浅い幼稚園児は、絵本を通じて語彙を増やし正しい言葉を覚える。また、保護者にも絵本の大切さを知ってもらい、本を好きになってもらえるよう働きかけている。
- 小学校では司書教諭の配置があっても公務の軽減はなく、十分な役割を果たせていない。本と子どもをつなぐ存在は重要であり、人的な配慮が必要だと思う。
- 修学旅行や総合的な学習等の調べ学習で使用する本は、複数校で必要とする場合がある。学校間で共有できるようなシステム作り等の工夫ができないだろうかと思う。
- 学校図書は充足率も重要だが、内容や鮮度も大切である。長く需要のある本を選定するだけでなく、子どもが興味を持つ本を購入したり、古い本を新しい本に入れ替えることも必要だ。
- 学校図書館では限界があり、市の図書館との連携が必要となる。
- 調べ学習では本を利用する価値があるが、現状では情報機器に頼りすぎているので、授業の手法について学校も考えるべきだと思う。
- 中学校では図書委員の生徒がおり、生徒会活動との兼ね合いを考えねばならない。
- 公立図書館を視野に入れて進めることで、学校図書館の活性化が期待できるのではないかと思う。また、学校図書館と公立図書館の連携を深めるためのパイプ役となる人も必要だと思う。
- 昼休みは外ヘ遊びに行ったり、中学校では放課後は部活動があるなど、学校の図書室が開いている時間に生徒が利用することは難しい。
- 読書の推進には朝読書を取り入れたり身近なところに本を置くなど、図書館よりも学級文庫の充実が有効ではないかと考える。
- 図書の充実だけでは読書力は上がらないと思う。幼少期からの本に親しむ活動の積み重ねが、読書活動につながると思う。
7 調査・検討結果
(1)30人学級編制の今後の方向性について
現在、実施初年度の年度途中であり、1学年を経た後に学校、保護者、児童の各方面に対して調査を行い、実績を把握するとともに、有効性、人数の是非、校種等について、改めて検証を行う必要があると考える。
(2)その他学力育成に関し必要な事項
1 教科「情報」のこれからについて
早期実施校については3年が経過し、教師・児童とも情報機器に慣れてきており環境整備も整っていることから、早期導入校から計画的に時間数を減らし、平成23年度には、全校で新学習指導要領に沿った教育課程への移行を完了する。
しかし、情報社会の現代において、自分に役立つ情報を取捨選択し活用していく情報活用能力は重要であるとともに、情報機器を利用する上で必要となる知識やマナーの育成等も欠かせないことから、他の教科の中で情報教育を取り入れていくよう努めるべきである。
2 小学校の外国語(英語)活動について
新学習指導要領の実施にあたっては、小学校専属のALTの配置等、人的措置が効果的だと考える。また、生駒市は地域人材に恵まれていることから、地域住民との連携も併せて検討すべきである。
なお、市独自に早期から英語活動に取り組むことは、児童にとって英語に親しむ機会が多くなることから有効であると考えるが、逆に英語嫌いを招く恐れもあるため、中学英語の準備ということではなく、発音に慣れ、英語やその背景にある文化に触れながらスムーズに英語に親しめるようにとの趣旨を逸脱しないよう注意する必要がある。
3 読書活動の推進及び学校図書館の活用について
幼少期から本に親しむことは大切で、幼いころからの積み重ねが読書活動につながっていくと思われるが、学校図書館は学校生活の中で十分活用できておらず、その理由として「時間がない」「蔵書が十分ではない」「司書教諭が時間的な制約から本来の役割を果たせていない」等があげられる。
このことから、児童・生徒だけでなく教師にとっても図書の仕事に専心できる専門家の存在は重要であり、学校への新たな人材配置が求められる。また、本市においては、「生駒市子ども読書活動推進計画」が策定されており、学校図書の学校間利用や、学校図書館と公立図書館の連携を深めるなど環境整備に努めることによって、一層幅広い読書活動推進システムの構築が期待される。
おわりに
今回は、これまでの提言に基づき実施している各施策の報告を受け、順調に実施されていることを確認するとともに、先の全国学力・学習状況調査の結果についても説明を受けた後、3つ目の所掌事務であるその他「学力育成に関し必要な事項」について検討を行いました。
学力の育成には、児童・生徒の1人1人の基礎学力を向上させることも大切ですが、知識の積み重ねだけではなく、実際に活用する力を育成することが重要であり、人間関係が希薄になりがちな現代社会では、人と人との交わりの中でお互いを尊重し高めあえるような関係を築くことも生きる力につながります。
それゆえ本報告書は、様々な手段を使って自分の思いや考えを伝えることができるとともに、相手の意見を聞き、相手を思いやることができる、「伝え合う力」の育成をめざした提言となりました。
なお、今後も家庭、地域、学校の連携及び協力のもと、国の動向や学校現場の課題と向き合いながら、新たな施策を模索するとともに、既に実施している施策についても状況に応じて見直しを行うことは必要だと考えており、今回、検証に至らなかった30人学級編制についても、実績を踏まえた上で対象学年の拡大等、これからの方向性について検討が必要と考えます。
添付ファイル
- PDFファイルの閲覧には Adobe Reader が必要です。同ソフトがインストールされていない場合には、Adobe 社のサイトから Adobe Reader をダウンロード(無償)してください。